痙攣性発声障害は喉頭すなわち声をつくりだす発声器官の筋肉が
過度に緊張し声の異常を招く臨床的疾患を言います。
話をする時に声がとぎれて、声を出し始めるのがつらく
痙攣により声を出し続けることが困難な疾患です。
痙攣性発声障害は筋肉の緊張度の異常を招く疾患(dystonia)の 一つで
声の異常を招く疾患の診断的な名称として使用されています。
痙攣性発声障害はこのような筋肉緊張異常の疾患で
声を出そうとする時に声帯の不適切な緊張と収縮により
声帯運動の異常を招き
他の局所性筋肉緊張異常を伴う事も少なくありません。
現在、アメリカの統計によると原因不明の痙攣性発声障害患者は
おおよそ5万から10万名程度で韓国ではまだ正確な統計資料はありませんが
人口の比例上、2千から3千名程度と推定されています。
痙攣性発声障害は症状が表れる年齢によって分類され
20才以前に発症した場合は幼年型、
20才以上の場合は成人型として区分します。
過去、痙攣性発声障害の原因は精神的なものだと考えられていました。
その理由は、飲酒や精神安定剤によって症状が改善されたり、ストレスを受けることで症状が悪化する事があったためです。
1980年代に入り脳神経学の研究が活発になり痙攣性発声障害の原因は脳中枢神経の統合過程で起こる脳基底神経節(basal ganglia)の
異常により喉頭神経調節のバランスが合わず喉頭筋肉に非正常的な痙攣が起こすものと考えられてきました。
最近、アメリカのNational Institute of Health所属National Institute of Neurologic Disorer喉頭音声センターのLudlow医師は
痙攣性発声障害患者の脳基底部にある喉頭感覚神経反射の中枢となる神経核部位(Nucleus Tractus of Solitarius)の
抑制神経異常によって喉頭神経調節機能の異常を招き、声を出すたびに声帯筋肉を微細に調節する機能が喪失され
過度に声帯筋肉が痙攣し収縮することで声が途切れ声を出す事が困難になる症状が表れるという事を証明しました。
- 声門型(glottic)
- 声門上部型(supraglottic)
- 筋緊張性痙攣(dystonia tremor)
- 内転型痙攣(adductor type with tremor)
- 外転型性内転型
- 内転型性外転型
痙攣性発声障害がある場合はまず聴覚学的音声検査を行い喉頭筋電図を通して
喉頭筋肉の過度な収縮や痙攣、緊張など話している間の筋肉の動きを精密に観察します。
音声音響学的検査で声の基本周波数の変化を調べ、スペクトグラムを通し音声波形の変化を調べます。
空気力学的検査では声帯摩擦の有用性と抵抗性を測定し、電気声紋波形を調べます。
喉頭ストロボスコープを通して声帯の動きを検査し、喉頭筋電図検査で非正常的に収縮している
喉頭筋肉の特徴そして異常のある喉頭筋肉と声帯筋肉を正確に診断します。
特に喉頭筋電図を利用し喉頭筋の病態生理学的な異常を確認し喉頭反射の異常を判断する事は
脳学習効果の有用性及び完治の可能性を予測する際にとても有用です。
当院ではアジア初で導入した超高速声帯撮影システムを利用して声帯筋肉の痙攣部位を正確に判断し
極小量のボツリヌスクリニックを痙攣が起きている筋肉にだけ精密に注入する事が可能になり
これを通して声が擦れる期間を短くできるようになりました。
抗コリン系薬物と神経安定剤、バクロフェン、ドーパミン受容体抑制剤等を使用します。
しかし、薬物治療では副作用の為、重度の筋緊張性異常疾患の場合にだけ使用され、痙攣性発声障害では補助的な療法として使用されています。
現在、最も最善の治療方法として利用されています。
しかし、効果が永久的ではなく3ヶ月から6ヶ月程度で一時的であり
定期的にボツリヌスクリニック注射を受けなければならないという欠点があります。
複合喉頭筋ボツリヌスクリニック注射の為には高度の技術力と喉頭筋電図に対する
豊富な経験が必要です。
その技術力により声が嗄れる期間を短縮、声の維持期間も長く出来ます。
また脳神経反射の学習を通して声の正常化を誘導する方法です。
この方法を施行した場合、次第に施術を受ける間隔が長くなる利点があり
その結果、3~4年後には複合喉頭筋ボツリヌスクリニック注入術の施行を受けた
患者の中おおよそ60%から高い完治可能性を確認する事が出来ました。
複合喉頭筋ボツリヌスクリニック注入術は韓国ではイェソン音声センターで
施行されていてとても満足出来る結果を出しています。
ボツリヌスクリニック治療へ
手術としては、1976年Dedo博士が“反回喉頭神経切断術”を開発しましたが
再発と症状の悪化により現在はほとんど施行されていません。
その後、1989年Tucker博士が初めて甲状軟骨形成術を痙攣性発声障害に
対して施術し、2000年にはisshiki博士により変形された
前方甲状軟骨形成術が施行されています。
しかし、この手術に対する2004年度の‘Laryngoscop’という耳鼻咽喉科の中で
最も権威のあるジャーナルに発表された結果を確認するととても満足出来ない
結果(1年長期追跡結果、手術を受けた33%だけが音声改善効果を維持)を
表し現在はボツリヌスクリニックが主な治療法であると結論を出しています。
その他の手術方法として1993年Genack & Woo博士が施行した内視鏡を
利用した‘声帯筋切断術‘があり、声帯筋肉の一部を切除する手術です。
この手術の変形で最近ではWatanabe博士がレーザーを使用し声帯筋肉の
一部を切除し、脂肪を注入する方法の手術も行いました。
Woo博士によるとこの‘声帯筋切断術‘の手術1年後の結果は満足出来る
結果ではなかったと発表しましたが、Watanabe博士は治療結果は良いという
報告を発表しました。
声帯筋の切除方法によりレーザーを使用する事もあり高周波や
低周波を使用する事も出来ます。
しかし、手術後の副作用による擦れ声の為、手術の際に脂肪を注
入したりする手術方法の変形も試みました。
しかし、長期的な治療結果はもう少し観察が必要です。
1993年にはBerke博士が‘選択的喉頭筋神経剥離術‘を発表しましたし
1989年Friendmanは神経刺激機移植術による治療方法を施行した事も
ありました。
このように多様な手術方法が試されているという事は、まだ手術的な
治療では満足出来る結果を得る事が出来ない事を間接的に表して
います。イェソンの経験でも手術的な方法では満足出来る結果は
得られなかったのが事実です。
結論としては痙攣性発声障害の治療法として声を改善させる為には
ボツリヌスクリニック注入術が最も適合していると考えられます。